Masae Uezumi - Paris And Provence
上住 雅恵 - パリとプロヴァンス
上住雅恵の近作はその強い輪郭、朱色、ピンク、紫の絶妙の手法によって、視覚の調和や統一した世界を暗示している。我々は視点そのもの(すなわち、視覚的な)よりはむしろ、投影された世界(探索の視点と言えようか)に取り込まれてしまっていることは明らかである。画家の休むことのない探求はスペクトルの流れによって展開される。その構成は時間の流れの中で常に絶え間なく変化する現実の示唆である。もしこの中に不変のものがあるとするならば、それは各自の直感に任されていると、画家はほのめかしているようである。
上住の視点において、残りのノスタルジーの痕跡は経験を統合する中での止むことのない不満の度合いによって色付けされる。このような主観的な悩みは、キャンバスの装飾的な統一感には調和しないように見える。にも関わらず、このような分裂は、上住のパリやプロヴァンスの都市空間の解釈への戦慄や精神的な波動を増やすだけなのである。
彼女の最近作は気品ある孤立と退廃との激しい瞬間を強調する。我々の目前の何か熱狂によって大海原の静けさが乱されるように現世界は衰えて行くように思われる。我々は多分アーチストの視覚を、描写を元気づける発火点や写象主義の引き金として見るであろう。それらは無形の、そして束の間のものから時間をもぎ取りたいという望みをもたらし、避けることのできない変化を防ぎたいという、相伴う人間の欲求は鋭く明白にされる。想起と現前性との両者の際立ちによって制限された局所的な居場所のない感覚が上住雅恵の絵画的努力を通して反映され、強烈さと切望と疑問の瞬間の危険をあえて冒そうとする彼女の意欲以上の何かがある。このアーチストの激しい心の眼を通して過去は蘇生するのである。
Dominique Nahas
ドミニク・ナハス 2008年
ドミニク・ナハスはマンハッタンに活動拠点を置くフリーのキュレーターおよび評論家である。
彼はプラット・インスティテュートにて批評理論を教授し、ニューヨークスタジオプログラム評論学部の一員である。
また、2007-8年度クリティック・イン・レジデンスとしてメリーランド芸術大学ホフバーガー大学院に招聘される。